筒

  M氏は何気なく公園の中に入った。そしてベンチに座り辺りを見回した。するとある物が目に入った。公園を出ようとしているおじいさんが、出口ら辺で緑色の竹のような筒を落として行ったのだ。落し物だ、M氏はすぐ悟った。だが、拾う気になれず放っておいた。帰るとき、出口の近くであの落し物を見つけた。
異様な雰囲気を発していた。M氏は何気なくそれを拾い一人で暮らしている家に持ち帰った。よく調べると文字が刻まれている。

この竹の筒で人をのぞくと純真な心を持つものは何
も変わらないが汚き心を持つものは獣に見える

と書いてある。信じはしなかったが試してみたくもなる。
次の日、さっそく公園で使ってみた。
「わっ、何だこりゃ。」
前方に座っているカップルは、オオカミとブタ、砂場で遊んでいる子供達は何も変わらなかったがその子達のお母さん達が獣の顔になっていた。
「するとこれは本物か。」
そして一日中それで遊んで過ごした。
次の日は会社に行った。これでも勤めている身だ。昨日とおとといは休みだったのだ。
筒も持って行った。ここも結構獣がいた。昼ごろ部長に呼ばれた、そして筒のことを思い出しのぞいてみた。
「うわっ。」
見えたのは大きないのしし、思わず近くにあった花瓶でなぐってしまった。部長は床に倒れた。
「あっ、やっちまった。」
その場から駆け出しまっすぐ家に帰った。
次の日、辞表を提出した。獣だらけの会社になんかいられない。
そしていろいろな会社を周り、ましな方の会社を見つけた。すぐに就職した。それから何ヶ月かごに結婚した。もちろん純真な心の持ち主と。
ある日、洗面所で顔を洗っているときに思いついた。鏡に自分を映し筒でのぞいてみるのだ。さっそくためした・・・・・。
鏡にはきつねの顔が映っていた。

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